脳脊髄液減少症 治療の発展普及について
2005/2/1

各界からのコメント   メッセージ
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目次 NO1 NO2 NO3 NO4 NO5 NO6
弁護士 安田隆彦先生 NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会(旧名・むち打ち症患者支援協会) 弁護士 樋上陽先生 NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会(旧名・むち打ち症患者支援協会)
脳神経外科医教授 
篠永正道先生 
国際医療福祉大学附属熱海病院

朝日新聞8月2日(東日本)掲載 「私の視点」より
河北新報 12月11日14日付け
「一筋の光を追って」 から
山王病院 脳神経外科教授 美馬先生のコメント


NO1.2005/弁護士 安田隆彦先生 2005/1/20

1 皆様、初めまして。私は、東京で、約21年間、弁護士をしていますが、貴会の特定非営利活動法人(以下「貴会」と言います)の中井代表等と2年前に、知り合い、すこしでも、会員の皆様や患者様や協力されている医師の先生方のお役に立てればと思い、この原稿を書いています。

2 私も弁護士ですから、当然「交通事故」の事案は多く扱います。私の所属する事務所は、交通事故の書籍も発行したりしていて、被害者の方からの相談やご依頼も多いのです。今最も苦労しているのは、やはり、いわゆる「鞭打ち症」のケース(低髄液圧症候群(以下「本症候群」と言います)も含みます)です。大半は「他覚所見」が無いケースが多く、保険会社(以下「損保」と言います)との交渉等にも苦労しています。

3 まず、後遺症の最低の14級さえ否認されるケースが圧倒的です。損保も、最初から、まるで「詐病・仮病」扱いです。交渉していても、仕方無いから、依頼者と相談して、了解頂き「訴訟」しないと埒があきません。当然、被害者の方は、本来訴訟などしたくないのです。

4 このような事態になるには、いくつかの複合的な要因があります。以下、簡潔に説明しましょう。
(1)第1に、医学的に「むち打ち症」の「メカニズム(仕組み)」の解明が最重要課題です。単なる「統計的な症状の披瀝や数字の羅列」・・・これが「症候群=シンドローム」という言葉の本質なのですが、これでは、全く不十分なのです。メカニズム=仕組みが判りませんからね。従って、適切な治療もできません。
 従って、医学的な因果関係(これがメカニズムです)が解明されていないと説得力は無いのです。
 我が国の裁判所は、「法律」分野以外の「専門分野」の事件ですと、立ち処に異常に慎重になります。医療のみならず、建築・コンピュータ等の分野の専門訴訟等も同じです。その分野の専門家が見れば、誰もが簡単に判断できることでも「鑑定」等を薦めます。費用もかかります。裁判官らが、慎重なのは良い面もありますが、訴訟は長引き、結局は被害者(原告)に負担がかかります。従って、むち打ち症関係についても、一刻も早い医学的なメカニズムの解明が(「症候群」という言葉の廃棄を早くするようになること)、まずは、必要です。「本件症候群」は、そのメカニズムに解明を与えることは可能性が大きいし、そうなって欲しいと心から願っています。

(2)第2に、行政サイド(厚労省)も、なかなか、新規の各治療や薬に関し、健保の適用や、許可を認めません。官僚的発想が強く、新規の治療・薬の認可・許可等に対し、愚鈍です。
「エイズ」被害を見れば、我が国の厚生行政のお粗末さは、歴然としています。

(3)第3に、損保の態度です。損保も、もちろん「営利私企業」ですから、私も現在のような、被害者への対応に関し、理解できる面はあります。しかし、交通事故(傷害事故)の大半を占める「むち打ち症」に対しては、損保は、何の手だて・前向きの対策等をおこなっていないと言っても過言では無いでしょう。
 被害者との示談交渉に際し、交通事故の難解な専門用語等を駆使し、被害者を丸め込むか、被害者に弁護士が付いたりしても、示談等が不可なら、「訴訟」を提起させる方向に、被害者を追い込む作業しかおこなっていないでしょう。きつい言い方ですが、それが損保の実態です。
 企業の「社会的責任」とか「コンプライアンス」等が叫ばれている今日、損保には、公平な人選で、むち打ち症に関する研究チームでも作って頂き、徹底的に糾明していただきたいものです。

(4)悲観的なことばかり言いましたが、貴会の活動や支援される医師の先生方のご活躍もあります。歩みはのろくても、このような皆様の努力は、地道に継続していけば、報われるものと、確信しています。今後とも、広く貴会の活動等を、各協力医師の先生方と共に、広めて参りましょう。
 私も不十分ながら、生意気なことを申しましたが、今後も情報交換して、助け合って参りたいと思います。

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〒107-0052
東京都港区赤坂3−9−18
ラウンドクロス赤坂見附3階
 アクト法律事務所
    弁護士 安田隆彦



NO2.2005/2/3 NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会(旧名・むち打ち症患者支援協会)(メッセージ)
2007年4月1日追加分

脳脊髄液減少症に関する署名活動の意義及び趣旨

1、本疾患の概要及び社会的状況
「脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)」は、交通事故、スポーツ障害、落下事故、暴力その他の原因で、頭・頸部や全身に強い衝撃が加わり、脳脊髄液が慢性的に漏れ続け、多様な症状が出る疾患である。この疾患の特徴は、頭痛、首、背中や腰の痛み、めまい、視力低下、耳鳴り、思考力低下、うつ症状、睡眠障害、脳神経系障害、極端な全身倦怠感や疲労感等の症状が複合的に現れる場合が多い。
しかし、これまで医療現場では発症原因が特定されない場合が多く、「怠け病」あるいは「精神的なもの」と診断され、患者の肉体的、精神的苦痛や経済的窮地、患者の家族等の苦労も計り知れないものがあった。
ところが、最近、この疾患の研究が徐々に進み、全国で30万人以上とされる『難治性の鞭うち症』も原因の1つとして注目されている。
検査法(MRI、RI)・治療法(ブラッドパッチ療法)の有用性も認められつつあり、長年苦しんできた患者にとって大きな光明となっている。
マスメディアで「脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)」が紹介され、一般社会の認識が広がってきたが、医学会における当疾患の認知度はまだまだ低く、この疾患の検査・治療をオープンで行っている病院が一箇所もない県も多い。ホームページ上で治療していることを公開している病院も若干数しかないのが現状である。
こういう状況下、患者は大変な苦痛を伴いながら、時間と費用をかけ他県の病院まで行き、治療を受けているのが現状である。医療費が家計を圧迫している患者も少なくない。
本疾患の発症原因の6割は交通事故であるのにもかかわらず、医学界・行政・社会全般等の認識が低く、補償問題でも殆どの患者は泣き寝入りするしかないという状況にあった。本疾病が発見され、ようやく患者(交通事故被害者)が希望をもって生きることのできる日が来つつある。全国で数十件の補償問題に対する裁判が行われている。

2、署名活動の現状
2008年3月1日現在、全国で署名を完了し都道府県知事宛に署名簿を提出したのは、23都府県。各都道府県議会で国への意見書提出を決議したのは
47都道府県。今後も各地域での署名は活発になっていくと思われる。
また、昨年1年間、全国規模での署名を行い、
2004年12月22日に10万名を越す署名簿を厚生労働省に提出した。署名簿を受け取った、西厚生労働副大臣から「重要な問題であり症例報告も上がってきている。皆様の力でここまで本当に良く頑張ってこられました。この運動が第二期に入っていく段階ですね。なんとかお力になるよう頑張ります」とコメントをいただいた。2006年11月17日午前8時15分 副大臣室にて署名 19100人分を池坊文部科学副大臣に提出しました懇談は50分に及んだ参加者 脳脊髄液減少症患者支援の会(川野小夜子代表)長谷川さん脳脊髄液減少症子供支援チーム代表 鈴木裕子、轟さん 岡野さん、NPO法人・脳脊髄液減少症患者・家族支援協会(旧名・鞭打ち症患者支援協会) 中井 脳脊髄液減少症ワーキングチーム事務局長 古屋範子議員その他多くの議員が出席しました。
 池坊副大臣は「学校や教員が病気の知識を持ち的確な対応が取れるよう、周知徹底したい」と述べました。
して2007年今日15日午後5時半 東京 国土交通省 大臣室にて 総計72403名分の自賠責保険に脳脊髄液減少症を求める署名を冬柴国土交通大臣に提出しました。会見は約20分にわたり まず 世話人である北海道の石郷岡さんに変わり 代表の中井が署名を提出 その後 冬柴大臣は国際医療福祉大学付属熱海病院 篠永教授と懇談 多岐にわたり意見を交換されました。
 会見には 脳脊髄液減少症ワーキングチーム座長
渡辺孝男議員 顧問 浜四津敏子議員 副座長 西博義議員
事務局長 古屋範子議員 山口なつお議員 の5名の国会議員が参加
 また NPOのメンバー 関西関東の患者会のメンバー
漫画家 まつもと泉先生 協会所属の弁護士の先生なども出席くださりました。

そして多くの署名の成果が遂に国を動かしました.
その後2008.2.27 舛添厚生労働大臣に347500名の署名を提出 過去の署名数を含めると
800640名となりました

詳細は下記(「脳脊髄液減少症」の普及による社会的影響と専門部会設置の必要性)を

1) 各地域での署名活動の意義及び有用性
(1) 署名活動の展開により、患者・医療関連・一般社会に対し、本疾患の認識の向上、拡大ができる。ちなみに本疾患患者でありながら、この疾患を知らずに、暗黒の苦悩の中に埋没し、悶々とした日々を送る方が数十万
人以上いると推測される。

(2)本疾患の認識・認知が向上することにより、患者および患者家族の社会的立場が認知され、患者が市民権を得る大きなステップとなる。

(3)行政がこの疾患への認識を高めることにより、本疾患の診療を行っている医師が診療体制を確立しやすくなる。

(4)本疾患についての最重要事項は、国が本疾患を認め、大きな社会問題との認識に立ち、行政(厚労省・国土交通省等)が本格的に本疾患の研究を始め、1日も早く「脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)」治療の健康保険適用を認可することである。
現在、本疾患について国会でも取り上げられるまでとなった。
しかし、健康保険の適用および疾患の研究は、予算を獲得して初めて実現することすることなので、その壁は厚く高い。
「地方からの声(バックアップ)が最大の後押しとなる」、「各地方での署名に大変期待しているし、強力に推進していっていただきたい」と地方での署名活動に非常に関心を寄せ期待をしている国会議員は多い。

3、結語(所感)
(1)患者の補償問題等について。
交通事故による「難治性の鞭うち症」の診療は、30〜40年前からほとんど変わっていないと言っても過言ではない。理由は、いろいろあると思うが、説明は別に譲るとして、1項でも記述したように本疾患患者の発症原
因の約6割は交通事故によるものであることは否定できない事実となりつつある。このことは、これからの補償問題の対応に苦しむ者にとって一筋の光明といっていいだろう。
また、本疾患の疫学上の実態が明らかになった平成12年以前までの患者が置かれていた実態の悲惨さは、想像を絶するものがあり、言葉では表現することができない。

(2)雑感
われわれ脳脊髄液減少症患者・家族支援協会(旧名・鞭打ち症患者支援協会)は、庶民の力を結集し、それを民衆運動として開花させ大きなうねりとすることを活動目標としている。髄液が漏れることは少し前まで非常識なことだった。その非常識が、医学界をはじめとする各分野でも、いまは常識となりつつある。
これは、治療病院が全国で3件しかないときから、髄液は漏れると信じて地道な活動をしてきた賜物だと自賛したい。
しかし、誰でもなりうるこの疾患でありながら、誰でも知っているというところまでは程遠いのが事実である。このギャップを埋める作業をこれからもし続けることが、協会の存在理由のひとつだと思われる。
署名活動は、このギャップを埋めるために大変有効な手段として、また、この疾患に対する理解者や協力者を増やす必要不可欠な運動であると確信するものである。

以上

平成17年2月3日
追加(平成19年4月1日) 
NPO法人 脳脊髄液減少症患者・家族支援協会・(旧名 鞭打ち症患者支援協会)


NO.3.2005/弁護士 樋上陽先生2005/2/14
1.主として交通事故による、いわゆる鞭打症の被害者が当法律事務所に相談に来られる件数は、交通事故相談の3〜4割を占めております。   

 これらの被害者には殆どレントゲン、CT等による客観的所見がなく単に愁訴に基づく訴えであるので保険会社との交渉においても事故後3〜4ヶ月以上の損害は殆ど交渉の対象とはならず、又後遺症認定もなされていないか或いはなされたとしてもせいぜい14級程度です。

 しかし鞭打症は骨折等と比べ、かえって長期間疾病が断続するのが通常でありますので痛みや不快感に対する辛棒は勿論、職場における労働もかなり制約されますので、殊の外被害者の物心に亘る損害が拡大するものです。

2.鞭打症患者に対する救済の不十分さは、単に保険会社のみならず、裁判所においても同様です。 

 この理由は1(上記項目)にかかって交通事故と症病との間の因果関係を証拠に
よって証明し難いところに起因しています。

 この証明の90%は専ら医師の診断と治療にかかっていますが、残念ながら現段階では医師自体明確に事故と症病との因果関係を論理的に証明するまでに至っておらず、従って十分な治療方法があるとはいえません。

 鞭打症患者の救済が十分に行われない理由は、上記の通りです。

3.昨年春、私は当法律事務所の事務長として採用した河原氏を通じ、初めて低髄液圧症候群という病名を知りました。

 私は3ヵ年に亘って苦しんだ河原氏の訴訟代理人として現在低髄液圧症候群による損害賠償請求事件を法廷で争っております。

この訴訟は河原氏の主治医の専門的な意見書という強力な武器によるものですが、最も説得力あふれる論旨は、長期間数ヶ所の病院で治癒しなかった病状が3回のブラッドパッチ手術によって僅か4ヶ月弱で軽快し完治した、という事実に基くものです。

 この事実こそ如何なる医学上の理論にも優ることでしょう。

4.事故の相手方(訴訟の被告)はこの訴訟について従前の伝統的とも言える医学界の常識論で対抗しております。

 残念ながら、この低髄液圧症候群は現段階では広く医学界に認知された診断と
治療方法であるとは言えず判例も殆ど出ていない状況であると認識しております。

 この低髄液圧症候群は、直ちに髄液漏れの部位を特定することは難しいが、
(河原氏の場合は部位の特定がなされています)髄液漏れの事実を客観的に診断し、その部位を推定することは、可能であります。

 この訴訟の結果如何では今後多数の鞭打ち患者を救済できる途が画期的に開かれるとともに、当該患者も治癒に至るまでの物心にわたる負担を相当程度軽減することができることでしょう。

 そしてそのような結果に至ることは、とりもなおさず加害者や保険会社にとっても、又負担を軽減できることになるのはいうまでもありません。


〒514−0035
三重県津市西丸之内21−19
丸の内ジャスティス6階

樋上陽法律事務所
代表弁護士 樋上(ひがみ) 陽(あきら


NO4.2005/3/15 NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会(旧名・むち打ち症患者支援協会)(メッセージ)
2008年2月更新版

「脳脊髄液減少症」の普及による社会的影響と専門部会設置の必要性
                                  
1.はじめに
 5年前のことです。完治しないといわれていた難治性の“いわゆる「むち打ち症」”が、交通事故などの外傷を発端として脳脊髄液が慢性的に漏れ続け減少することが起因としていることを神奈川県平塚市の一医師が解明されました。治療法としてはリスク・効果等を総合的に判断した結果として、自分自身の血液を用い漏れている箇所をふさぐという「ブラッドパッチ療法」が最も多用されています。
 平成14年8月、この治療をうけ改善した患者20名で、同じ思いで苦しんでいる方のため「早くこの病気を全国に普及すること」を目的に
NPO法人「脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」(旧名・鞭打ち症患者支援協会)(以下協会という)」が設立されました。協会は関連医師・患者さん等の協力のもと、全力で本疾患の普及運動を展開。その努力が実を結び、この病気は多くの新聞・TV等のメディアにも紹介され、3年間で診療を開始した医療施設は協会が把握しているだけでも100施設(
大学病院 13件含む2006/3/1現在)を超え、治療を受けられた患者数は実態調査結果(アンケート、2005年5月現在)の最終結果(患者数)は2,455名になりました。
(実際の患者数は諸般の理由でデータを出せない病院施設もあり現実的には3,500名を超える方がすでに治療を受けられたと予測されます)2007年4月現在5000名を越える。

2.医療現場及び医学界の現状
 ブラッドパッチ療法の効果は、現時点(約32箇所の医療施設へのアンケートの回答の結果)での完治・改善率は70%近くあり、患者さんにとって大きな福音となっております。この70%というデータは2年前(調査病院13施設・患者数784名対象)に実態調査した時の改善率とほぼ同じです。患者数が784名から2,455名近くに増えても、治療病院(アンケートに協力くださった病院)が13施設から32箇所の施設となっても同じデータがでることは、この病態・この治療法の信憑性が更に高まったものと確信します。
 また、この病態は学術的にも認められつつあります。昨年、脳神経外科学会領域では世界でもっとも権威のある米国の医学誌、ジャーナルオブニューロサージェリーに論文が記載されました。その影響もあり診療を開始する脳神経外科医が増えています。また、諸般の状況により、麻酔科医が診療する医療施設も増えてきています。協会が把握してないところも含めれば把握医療施設数の3〜4倍になるものと推測されます。そのためか、脳神経外科領域・麻酔科領域で頻繁に学術研究成果が全国規模で発表されるようになりました。
(2006.12.1追加分)2006年10月京都国際会館 にて第65回 脳神経外科学会総会が開催されました。そこで学術シンポジウム「脳脊髄液減少症の現状と問題点解明に向けて」が開催されました。 暫定ですが脳脊髄液減少症研究会からガイドライン要綱が発表され、脳脊髄液減少症研究G(篠永医師委員長)が同年11月17日厚生労働省に暫定ガイドラインを提出しました。
さらにシンポジウム開催後 橋本会長 嘉山学術委員長より記者会見があり1年以内に「学会間の垣根を払いガイドラインを作らなければならない」と述べ整形外科、脊髄頭痛などにかかわる学会にこれからはたらきかけると意欲をみせられました。(毎日新聞10月21日朝刊より)
(2007.4.1追加分)そしてついに2007年4月1日 厚生労働省 科学研究費の交付先が決定し山形大学脳外科嘉山教授(脳神経外科学術委員長)「脳脊髄液減少症に関する治療・診断法の確立に関する研究」が採択されました。今後「脳脊髄液減少症の診断に関する実態の調査」「診断基準の作成」「治療法の検討」「脳脊髄液減少症になる原因の検討」がなされることになります。
病態解明 保険適用に一歩前進したといえると思います。


3.交通事故と被害者救済の現状及び社会的問題点
 今までの臨床データーからみても、「脳脊髄液減少症」と交通事故は密接な関係があります。2,500人近い患者さんの半数以上は交通事故が発端となって発症しています。今後も交通事故がなくならない限り患者数は増え続けます。そうなりますと国土交通省が管理する自賠責との関連、さらに任意保険損保会社との諸問題が生じます。現在、自賠責に対し後遺症等級に不服な交通事故被害者が、行政書士や弁護士を通じて異議申し立てを行う件数は、全国で数え切れないほど多く発生していています。
 被害者はこう訴えます。「事故後、検査で髄液が漏れている画像がこれだけはっきり出ているではないか? 検査ではっきり出る所見は12級のはずでしょう。自賠責の14級の限度額の75万円と12級の限度額の224万円では大きな差ですよ。治療にどれだけ負担がかかると思う? お金を払ってよ」また、損保会社との間では治療費などをめぐる裁判が全国で50件(今後も裁判になると予測される数も含む)近く行われていると推測でき、現在、大きな社会問題となっているのです。
 自賠責保険とは説明するまでもなく、国が被害者保護を目的として作った強制保険であり、傷害・後遺障害・死亡の被害者に対して、支払基準に従って算出された金額で支払うものであります。簡単に例をあげます。交通事故後、半年以上たっても症状が残る、しかし検査上仮に「他覚的所見がなく(検査上異常がない)、自覚症状だけとみなされる鞭打ち症」の場合でも、医学的に説明可能なものであれば、「14級」として75万円の自賠責からの支払いになります。過去も今も、むち打ち症の場合、ほとんどが「非該当」、せいぜい「14級」で収まっておりました。しかし、医学的には髄液が漏れると、本当に多彩な症状があらわれ、精神まで苦しむのです。また、平成12年以前は、この病態は発見されておらず、仮に髄液が漏れていた重症患者であったとしても、画像診断では異常なしと判断され、自賠責の認定は、他の傷病名を併記されることにより、よくて、後遺症等級「14級」でした。ですが、他覚的所見がある場合は、12級の認定が相当と思われます。異議申し立てをしても任意保険に訴えても、結局は「心因性疾患扱い」にされ、さらに高等裁判まで控訴しても「敗訴がほとんど」で裁判費用までも被害者が支払ってきたのが実態です。被害者は、罪もないのに不条理に泣くのみでした。原因不明の病気に対し、心療内科、さらには一時しのぎの治療を何十年続けている人も多数いらっしゃいます。
 こういった患者さんが「脳脊髄液減少症」を疑い、検査すると高い確率で異常画像が出ます。時間は遡れないから残念で仕方ありません。こういう患者さんたちに対し、裁判所などが心因性疾患と認定してきました。よく、むち打ち症は経験しないと、その苦悩・苦渋はわからないといわれます。協会では患者さんの相談も多数受けて来ましたが、まったくその通りです。
その苦悩・苦渋はどれほどのものか、想像を絶するものです。被害者の症状は改善せず、生活保護などの負担を国や各地方自治体が請け負ったケースはあると思います。また国にとって、もっとも重要な「人材損失」という損失があります。

2007年2月15日 多くの方の協力をもって自賠責保険内に脳脊髄液減少症の治療を求める署名を展開し72403名の署名を持って国土交通大臣冬柴大臣に提出しました。

4.本疾患の普及・治療法の確立による多大な社会的利益の創出
 今回行っているアンケートの結果データを見てみますと、交通事故後2年未満の患者さん(ブラッドパッチを受ける前にありとあらゆる治療をしても改善しなかった)にブラッドパッチ療法をしたケースは改善率が非常に高い傾向(改善率78.9%)がでております。つまり、国がこの治療法の研究をさらに進め、また実態調査を行い、早期発見・早期治療の推進なども行ない、髄液の漏れを他覚的所見のある後遺障害(12級)として認定していけば、治療の遷延化も防ぐことが出来、傷害部分(治療費、入院雑費、通院交通費、休業損害、慰謝料など)としての賠償額の支払が減り、かつ、後遺障害部分としての賠償額が厚くなりますから、被害者の救済も十分できる結果になります。また、事故の早期解決は、加害者、損保会社全てにとっても利益になります。更に早期検査・早期治療ができるならば、従来のいわゆる「鞭打ち症」の治療の現状であった、漫然と長期に渡る治療の必要性がなく、医療費(健康保険)の負担も減ります。この病態が解明され、治療が普及されることにより、長期的にみれば国の負担が減るはずなのです。なによりも3項に記述した100万人以上といわれている「人材損失」が解消されれば、社会全般への利益性も飛躍的に向上することは必至であります。

5.現状を踏まえての今後の早期対策案
 脳神経外科学会内ではこの病態が完全に認められている段階ではありません。
しかし脳神経外科、麻酔科、整形外科などの多くの科のドクターが集まり、「脳脊髄液減少症研究会」がすでに発足しており、この3月13日には3回目の学術研究会が日本医科大学で行われました。この研究会には、渡辺孝男参議院議員(日本脳神経外科学会専門医)も参加されました。参加された議員のコメントを紹介します。

「脳脊髄液減少症研究会に出席して」
 
参議院議員 渡 辺 孝 男
 
 去る3月13日に開催されました「第3回脳脊髄液減少症研究会」に出席し、各地で本症の診断・治療に当たっている脳神経外科、神経内科、整形外科、麻酔科の医師による学術発表を聞かせていただきました。
 
 診断がきちんとなされた症例に対するブラッドパッチ治療法は80%強の改善がなされていることを確認でき、あらためて「脳脊髄液減少症」の診断・治療のガイドラインの早期完成と関係学会の医師への周知、及び広範囲の実証研究の推進の必要性を実感いたしました。これらの着実な推進こそが医療保険の適用への道を開き、本症で悩んでおられる多くの患者・家族の皆様に適切な医療サービスがなされるものと確信致しました。

この研究会は、社団法人 日本脳神経外科学会公式ホームページでも研究会開催の通知がされました。また、今回の世話人であられます喜多村孝幸医師(日本医科大学脳神経外科助教授)は、日本脳神経外科学会保険委員会にブラッドパッチ療法の保険適用の要望書を2月初頭に出されました。それでもなお、学術的にエビデンス(証拠)が不十分と言われる専門科も少なからず存在します。しかし名高い大学病院を含め多くの医療施設での臨床データー、さらに世界一権威ある医学誌に髄液漏れの論文が出ました。証拠不十分であればこそ、この臨床データの意味の重きを取り、国が力をいれ研究を進めることが責務であるはずです。
 しかし現時点では、行政(厚労働省・文部科学省)での取り組みは不十分といわざるを得ません。そのために重要な第一ステップとして各政党・会派または、
国会議員の主導のもと、各専門分野のエキスパートが集まった専門部会の設置を推進していくべきであると強く主張するものです。
 今後、間違いなく、広まっていくであろう、この病気をいち早く、先んじて取り組んでいただける政党・国会議員に期待するとともに、実行していただければ、社会的にも人権・人間性を軽んじられてきた、100万人以上いるとされているこの疾患の患者さん・その家族等、どれだけ多くの方が救われるか。更には、この髄液の問題は、むち打ち症にかぎらず、慢性疲労症候群、線維筋痛症、自律神経失調症など、難病・慢性病といわれている多くの未解明の病態にも関与していることがわかり始めています。現在、一部の政党が真剣に取り組んでおられる高次脳機能障害との関与、もしくはリンクしていくことは間違いありません。他の病気より圧倒的に潜在患者数が多く、なおかつ、病態がある程度解明されている「脳脊髄液減少症」に対し早急に専門部会を立ち上げるのが最重要課題であります。
 私どもの案として、専門部会メンバーは患者団体・損保協会・自賠責損害調査事務所・医師団体(脳脊髄液減少症研究会)・弁護士・自賠責請求手続を所管業
務とする行政書士・厚生労働省・国土交通省、国会議員から選出されるのが望ましいと考えます。

「脳脊髄液減少症」に対し早急に専門部会を立ち上げるのが最重要課題であります。
 私どもの案として、専門部会メンバーは患者団体・損保協会・自賠責損害調査事務所・医師団体(脳脊髄液減少症研究会)・弁護士・自賠責請求手続を所管業
務とする行政書士・厚生労働省・国土交通省、国会議員から選出されるのが望ましいと考えます。

6.全国、各地方の声も含めての要望
 先にも述べましたように、この治療をして少なくとも改善し良くなった方などが、この病気の取りまく実情を多くの市民にわかっていただきたいと署名活動を展開しました。現在24都府県で署名を各自治体へ提出済み、または署名運動が展開されております。(
2008年2月末までには47都道府県/106市議会にて政府において政府に対しこの治療を推進する意見書が議会で可決しています。・・・署名のページ参照)
地方の声も踏まえ各政党・会派または、国会議員の主導により、早急な専門部会設置を要望します。尚 2007年10月を目指し医学界が共通ガイドラインを作成していく動きを見せております。
先にも書きましたがその具体的な研究費に公的予算が着きました。(以下参照)
2007年4月1日 厚生労働省 科学研究費の交付先が決定し山形大学脳外科嘉山教授(脳神経外科学術委員長)「脳脊髄液減少症に関する治療・診断法の確立に関する研究」が採択されました。今後「脳脊髄液減少症の診断に関する実態の調査」「診断基準の作成」「治療法の検討」「脳脊髄液減少症になる原因の検討」がなされることになります。
研究は3年計画。内容は▽診断に関する実態調査▽診断基準の作成▽発症原因の調査▽治療法の検討−−など。約15人が研究班を作る。メンバーの専門は脳神経外科、頭痛、神経内科、神経外傷、整形外科、放射線科、疫学、統計学などにまたがる。この中には、事故によるむち打ちと髄液漏れとの関連性を指摘してきた篠永正道・国際医療福祉大熱海病院教授も加わる。嘉山教授は「髄液漏れは診断基準が定まっていないため、過剰診断や診断漏れがあると思う。しっかりした診断基準を作りたい。むち打ちで長年苦しんでいる患者たちの病態究明にもつなげたい」と話している。


まさしく早急に早急に各政党・会派または、国会議員の主導により、早急な専門部会設置を要望します。自賠責保険の問題 労災認定の問題 健康保険の問題さまざまな法整備が必要でございます。

・最後に皆様へのお願い。
 以上の状況を踏まえ、多方面への多大なる社会全般への利益の創出及び貢献を早期に達成するには、各関係者のご尽力はもとより、協会設立以来、貫いてきたNPO法人としての根本精神を更に高揚すると共に、ボランティアとしての活動も現在の何倍もの発展をしていかなければ不可能だと考えます。
しかし、ホームページにも記載しておりますが活動の基盤となる協会の財政面は、非常に切迫している状況であります。財政が現状のままであれば、本年上半期にも、3事業所の閉鎖、諸活動の大幅な縮小となることは止むを得ない状況にあります。
 どうか、協会の運動及び存続意義に賛同していただける個人、法人・任意団体・財団・行政関係等の方がございましたら、ご援助の程、お願い申し上げる次第でございます。
 



NO5.2005/8/4 朝日新聞8月2日(東日本)掲載 「私の視点」より
脳神経外科医教授 篠永正道先生 国際医療福祉大学附属熱海病院

一年間の交通事故による負傷者約100万人(昨年は118万人)の5%が6ヶ月以上の長期にわたり頭や首、腰の痛みや、めまい、耳鳴り、吐き気、視力低下、著しい疲労感など様々な症状で苦しんでいると推定される。そのため職を失ったり、
家庭が崩壊する例は決してまれでない。これまで症状が長引く原因として頚椎の関節障害や靭帯損傷、頚部交感神経障害によるバレリュー症候群、うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などが取り上げられてきた。しかしどれも多彩な症状が長期にわたって持続することを説明するのは困難だった。そのために補償金目当ての「詐病」を疑われこともしばしばだった。

今から約5年前、私はむち打ち症後遺症の症状と特発性低髄液圧症候群の症状が似通っていることに注目し、多くのむち打ち症後遺症の患者さんの腰椎部から脳脊髄液がもれていることを発見した、むち打ちの衝撃が一時的に脳脊髄液圧の急激な上昇をもたらし、腰椎部から持続的に脳脊髄液がもれ続けることにより脳脊髄液が減少し、様々な症状を呈すると考えたのだ。
特発性低髄液圧症候群(SIH)の治療は臥床安静と十分な水分摂取が主だが、それで改善しないときは患者さん自身の血液を脊髄硬膜外腔に注入して髄液の漏出を止めるブラッドパッチ療法が効果的である。そこでこのブラッドパッチ法をMRI(磁気共鳴断層撮影)などで診断のついたむち打ち症後遺症の皆さんに行い、約7割の患者さんの症状を改善することができた。
ところが、一般的にむち打ち症で患者さんが通う整形外科などの医療現場では認知度が低く、理解が遅れている。また、厚生労働省も「むち打ち症と脳脊髄液減少症の因果関係が不明」「学会で認められているとは言いがたい」などとして、保険診療の適用をいまだ認めていない。
それもあってか治療費や後遺障害示談金を支払う立場の保険会社は概してむち打ち症後遺症としての脳脊髄液減少症に懐疑的であり、支払いを拒否する例が後を絶たない。
この疾患が早期に診断・治療されれば、医療費が削減されることは明らかで、保険会社の治療会社の治療費支払金額もかなり減少するはずだ。
ブラッドパッチ法は患者さんの口コミやインターネットでの情報伝達、テレビ、新聞などで取り上げられて以来、徐々に広まってきた。現在までに治療を受けた患者さんは2千人を超えた。また、全国で患者の会が中心となり、保険適用を求めて署名を行い、いくつかの府県議会ではこの疾患の正当な評価と治療法の確立を求めた議決がなされてもいる。
一方 約3年前からは数十人の医師があつまり、脳脊髄液減少研究会を立ち上げ、この疾患についての研究・情報交換を行っている。
しかしこの疾患に関してはなぜ多彩な症状が出現するのか、どのように脳脊髄液がもれるのかなど基礎的な研究は大きく立ち遅れている。さらに有効な治療法の開発も望まれる。
むち打ち症後遺症患者がブラッドパッチ治療を求めて限られた医療機関に殺到している現状を踏まえると医学会、行政、法曹界、保険会社などがこの問題に積極的に取り組む時期に来ていると考える。交通事故被害者の救済のため、一刻も早い治療体制・研究体制の確立を願ってやまない。



河北新報 2005年12月11日14日付け
「一筋の光を追って」 から
山王病院 脳神経外科教授 美馬先生のコメント


手術数が350人を超す山王病院(東京都港区)脳神経外科教授
美馬達夫先生は「効果は知られ始めたが「精神的な効果」「うさんくさい」
と無視する同業者も多い」と嘆く。実際、医療現場には「おまじないみたいな手術」
(宮城県内のある脳外科医)と突き放す声がある。
美馬医師は懐疑的な医師の傾向として、@症状が多様で髄液漏れを原因と認めてない
A血液が漏出穴をふさぎ 症状が改善するのを信じていないーーと語る。

美馬医師の下には 月平均40人の新患が訪れる。関東だけでなく、北海道
九州、ロシアやグアムからの患者もいる。健康保険の適用外であり、患者の費用負担も
大きい。「自己の血液以外の効果的な成分や、自然治癒力を高める研究を進め、改善率
を高めていきたい。
生活が困窮する人も多く患者を見捨てることはできない
」治療に取り組む
医師たちの思いを美馬医師は代弁しました。


さらに美馬先生は「早期治療できれば(さまざまな病院を回る)ドクターショッピングを
防止でき、将来の医療費を低く抑えられる。コストパフォーマンスを比較し、国も
積極的な支援に動くべきだ」と語ってくださっている